アカウントプランナーという仕事に、どんなイメージを持っていますか?
「企画もする広告代理店の営業でしょ?」
「華やかなイメージだけど、大変そう。私に務まるかな……」
「アカウントプランナーは、AIの活用で市場価値が下がるんじゃ」
じつは、どれも誤解なんです。
今回はアカウントプランナー未経験者向けに、仕事内容や年収、働き方のリアル、そしてキャリアの将来性まで、気になる情報を一挙に解説します。未経験からアカウントプランナーに転職するための具体的なロードマップも紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
Index
1. アカウントプランナーの仕事内容
まずは、アカウントプランナーとはどんな仕事か、「営業」との違いも含めて紹介します。
アカウントプランナーの仕事って?
アカウントプランナーとは、単なる広告営業ではありません。広告主である「クライアント」、広告を掲載する「広告媒体」、そして広告を制作する「社内の専門チーム」という、三者の中心に立つプロジェクトの総責任者です。
アカウントプランナーの仕事は、クライアントが抱えるビジネス課題を明確にすることからスタートします。市場分析をはじめとするリサーチをしながら、課題の本質を特定。
課題に対して、「誰に、何を、どのような方法で伝えれば最も効果的か」というコミュニケーションの全体設計から実行までを統括。クリエイティブチームやマーケティングチームといった多様な専門家を率いて、プロジェクトを成功へと導きます。
| 💡そもそも広告代理店って?広告代理店は大きく3つに分類でき、それぞれでアカウントプランナーの仕事の焦点が変わります。 | |
| 総合広告代理店 | テレビからWebまであらゆる媒体を扱う代理店です。様々なメディアを組み合わせた統合的なキャンペーンを設計する「プロデューサー」的な仕事が中心です。 |
| デジタル広告代理店 | インターネット広告に特化した代理店です。日々のデータ分析に基づき、細かな改善を繰り返していく、より分析的でスピーディーな対応が求められます。 |
| 専門広告代理店 / ハウスエージェンシー | 特定の業界(例:不動産、医療)や、特定の企業グループの広告を専門に扱います。その領域における深い専門知識が求められます。 |
従来型の広告営業やアカウントエグゼクティブとの違い
従来の広告営業が自社の広告枠を売ることをミッションとするのに対し、アカウントプランナーはクライアントのビジネスパートナーとして本質的な課題解決に携わる仕事です。
企業によっては、「アカウントエグゼクティブ(AE)」という職種を置き、窓口業務はアカウントエグゼクティブ、戦略部分をアカウントプランナーといった形で分業するケースもあります。
| 項目 | 広告代理店の営業 (従来型) | アカウントエグゼクティブ (AE) | アカウントプランナー (AP) |
| 使命 (Mission) | 広告枠の販売、売上目標の達成 | プロジェクトのスムーズな実行、関係維持 | クライアントの事業課題解決 |
| 主な業務 | 広告枠の提案・販売 | 進行・予算管理 | 市場調査、データ分析、戦略立案、効果測定 |
| 思考様式 | 「この広告枠をどう売るか?」 | 「どうやってプロジェクトを進めるか?」 | 「クライアントの真の課題は何か?」 |
アカウントプランナーの1日(経験1〜2年目のスケジュール例)
若手アカウントプランナーを想定した、1日のスケジュール例を紹介します。
| 時間帯 | 業務内容 | 活用するスキル・ツール |
| 9:30 – 10:00 | 始業・タスク確認 Slackやメールをチェックし、AsanaやNotionで今日のタスクを整理する。 | 情報整理能力、タスク管理ツール (Asana, Notion, Trelloなど) |
| 10:00 – 10:30 | 朝会(チームミーティング) 昨日やったこと、今日やること、困っていることをチームで共有する。 | コミュニケーション能力、各種ツール (Slack, Teams, Zoom, Google Meetなど) |
| 10:30 – 12:30 | クライアント定例資料作成 Google Analyticsや広告管理画面のデータを分析し、PowerPointで報告資料を作成する。 | Google Analytics、資料作成スキル (PowerPoint, Excel) |
| 12:30 – 13:30 | 昼休憩 | – |
| 13:30 – 15:00 | クライアントとの定例会議 ZoomやGoogle Meetでキャンペーンの成果を報告し、次のアクションを提案する。 | オンライン会議ツール(Zoom, Google Meet)、プレゼンテーション能力、交渉力 |
| 15:00 – 16:00 | 社内ブレインストーミング 新規提案に向けて、クリエイティブやマーケターとアイデアを出し合う。 | 企画発想力、ファシリテーション能力、Miro |
| 16:00 – 18:30 | 企画書作成・デスクワーク ブレスト内容を元に企画書を作成。クライアントからのメール返信や社内調整なども行う。 | 論理的思考力、ドキュメント作成能力 (Word, PowerPoint) |
| 18:30 – | 終業・情報収集 日報をまとめ、明日のタスクを整理。退勤後や通勤時間に業界ニュースをチェックする人も多い。 | 自己管理能力、継続的な学習意欲 |
2. アカウントプランナーの「きつさ」と「やりがい」
アカウントプランナーは広告代理店の花形という華やかなイメージがある一方で、「きつい」「激務」などハードな側面もあります。
「きつさ」の正体は、プレッシャーとスケジュール
アカウントプランナーがきついと言われる理由の1つが、成果へのプレッシャーです。アカウントプランナーはクライアントから数千万円から数億円規模の予算を預かります。結果は常に数字で厳しく評価されるため、改善策を提示し続けなければならないプレッシャーを感じやすい職種です。
また、スケジュールが予測しにくいことも懸念点です。クライアントの都合による急な変更や、コンペ前に連日深夜まで資料を作成するなど、勤務時間は不規則になりがちです。
くわえて、クライアントと社内の板挟みになりやすいことも、きつさの要因です。 クライアントの「もっと早く、安く、良いものを」という要求と、社内チームの「制作には時間も予算も必要だ」という要求の間に立ちながら、両者が納得できるよう調整する必要があります。
「やりがい」は、ビジネスに貢献している実感
アカウントプランナーのやりがいは、クライアントへの貢献度が目に見える形で表れることです。自分で考えた戦略によってクライアントの商品の売上が劇的に伸びたり、無名だったサービスが世の中に広まったりするのを目の当たりにできます。
大規模なキャンペーンや、時には国際的なイベントに関わる際は、自分の仕事が社会に大きな影響を与えるダイナミズムを実感できるでしょう。
また、担当するクライアントによって食品、自動車、IT、金融などさまざまな業界に携われるので、案件ごとに新しい業界を深く学ぶ必要があります。好奇心旺盛な方は、とくに楽しみながら働けるでしょう。
3. アカウントプランナーの働き方
「華やかだけど激務」というイメージは、企業の規模や種類、そして社会的な働き方改革の流れの中で変化しています。実際にアカウントプランナーに転職した後、どんな働き方やライフスタイルになるのか、データを交えて紹介します。
データでわかるアカウントプランナー
| 項目 | 業界の平均・傾向 | 補足・コンテクスト |
| 年収レンジ | 未経験:400〜600万円 経験者:400〜700万円 | 大手や外資系ではこれ以上も可能。成果に応じたインセンティブ制度を設ける企業も多い。 |
| リモートワーク導入率(※) | 50% | デジタル広告代理店を中心に、週数日のリモートワークやフルリモート制度の導入が進んでいる。 |
| 月間平均残業時間 | 20〜45時間 | 働き方改革の影響で大幅に減少傾向。ただし、コンペ前や繁忙期には一時的に増加。 |
| 平均年齢 | 20代後半〜30代前半 | 特にデジタル広告業界は若手が多く活躍。サイバーエージェントの平均年齢は33.7歳。 |
| 男女比 | 女性比率が増加中 | 近年は新卒採用で男女比がほぼ1:1になるなど、女性の活躍が目覚ましい。 |
※2025年9月時点での、各種転職サイトや業界レポートのデータを参考にしています。実際の数値は企業や個人のスキルによって変動します。
※「第十回・テレワークに関する調査」を発表 テレワーク定着も「頻度減少」と「マネジメントの壁」 – パーソル総合研究所
企業規模による働き方の違い
広告代理店でも企業規模によって、得られる経験や働き方が大きく異なります。
| 広告代理店の規模と働き方 | |
| 大手広告代理店 | 大企業の案件に携わる機会が多く、教育・研修制度も充実しています。業務が細分化されており、安定した環境で専門性を高められますが、個人の裁量権は比較的小さい傾向があります。 |
| 中小・ベンチャー広告代理店 | 若いうちから大きな裁量権を与えられ、一人で幅広い業務を担当します。意思決定のスピードが速く、自ら学び行動する主体性が強く求められる、プレッシャーの中でスピーディーに成長していく環境です。 |
4. アカウントプランナーの未経験転職で採用担当者が見ているポイント
広告戦略を担うアカウントプランナーの未経験採用で、企業は「経験の量」ではなく「経験の質」をシビアに見ています。
華やかなイメージだけでは通用しないこの広告業界では、泥臭く成果を追求し、困難な局面を乗り越えてきた経験が武器になります。
具体的にどんな経験が強みになるのか見ていきましょう。
武器になる経験①:困難な目標に対して主体的に計画し、最後までやり遂げた経験
たとえば……
- 「業務コストを20%削減する」「顧客満足度を15%向上させる」といった、部署やチームに課された目標の達成に貢献した経験
- 前例のない業務やイベントの担当者になり、手探りの状態から計画を立て、関係者を巻き込みながら無事に成功させた経験
アカウントプランナーは、クライアントの多様な事業目標に責任を負います。与えられた目標の意味を理解し、達成のために何をすべきか主体的に考えて行動した経験は、クライアントの期待を超えるための基礎体力となります。
武器になる経験②:立場の違う関係者の間に立ち、円滑なコミュニケーションを促した経験
たとえば……
- お客様からのクレームに対し、ただ謝罪するだけでなく、関連部署と連携して根本原因を解決し、最終的に感謝された経験
- 複数部署から集まる情報をとりまとめ、抜け漏れや矛盾がないかを確認し、会議資料として分かりやすく整理した経験
- 上司や他部署の担当者が円滑に業務を進められるよう、先回りして必要な情報を提供したり、スケジュールを調整したりした経験
アカウントプランナーの仕事は、多様な専門家(クライアント、デザイナー、マーケター)のハブ(中心)となることです。それぞれの立場や専門用語を理解し、情報を正確に仲介することでプロジェクトを円滑に進めた経験は、チーム全体の成果を最大化する上で不可欠です。
武器になる経験③:現状のやり方を疑い、「もっと良くする」を実践した経験
たとえば……
- ルーティン業務を「もっと効率的にできるはずだ」と考えて、Excelマクロや新しいツールを導入して作業時間を半分にした経験
- お客様から頻繁に受ける質問とその回答をFAQとしてまとめ、チーム全体の問い合わせ対応の効率を上げた経験
- 「なぜこの資料は必要なんだろう?」と目的から考え直し、不要な報告業務をなくすことを上司に提案し、承認された経験
アカウントプランナーには、クライアントの課題を解決するため、常に「もっと良い方法はないか」と問い続ける姿勢が求められます。現状維持を良しとせず、業務の目的を理解した上で、主体的に改善策を考えて実行した経験は、クライアントに本質的な価値を提供するための原動力となります。
5. アカウントプランナーになった後の未来をチェック!
一度スキルを身につければ、その先のキャリアの選択肢が大きく広がるのも、アカウントプランナーの魅力です。ここでは、転職後のキャリアの市場価値について紹介します。
実務で身につくアカウントプランナーのスキルとは?
- 専門・実行スキル
マーケティングの基本フレームワーク(3C分析など)、各種広告メディアの特性に関する知識、データ分析の基礎、提案資料作成スキルなどが身につきます。 - ポータブルスキル
クライアントの真の課題を引き出す「ヒアリング力」、解決策を論理的に説明する「提案力」、多様な関係者を動かす「交渉力・調整力」、複数案件を同時に動かす「プロジェクトマネジメント能力」が徹底的に磨かれます。 - キャリアチェンジにつながるスキル
特定業界の深いビジネス知識、経営層と対話するための経営視点、新規事業の立ち上げに関する知見などが得られます。
アカウントプランナーのキャリアパス
アカウントプランナーとして経験を積むことで、多様なキャリアへと繋がります。
| キャリアの方向性 | 具体的なキャリアパス | 役割・ミッション |
| 専門性を極める | チームの中核を担う「シニアアカウントプランナー」 | 大規模・複雑な案件を牽引し、若手を指導するチームの中核的存在。 |
| チームを育てる「チームリーダー/マネージャー」 | チーム全体の成果を最大化し、メンバーの育成や事業部のPLに責任を持ちます。 | |
| データを武器にする「データアナリスト」 | 広告効果や市場データを深く分析し、データドリブンな戦略立案を専門とします。 | |
| 戦略を極める「マーケティングストラテジスト」 | より上流の経営戦略に近い視点から、クライアントの事業全体のマーケティング戦略を設計します。 | |
| 話題作りで流行を仕掛ける「PRプランナー」 | SNSやメディアリレーションズを駆使し、ブランドの認知獲得やイメージアップを専門とします。 | |
| 経験を活かしてキャリアチェンジ | 事業の成長を牽引する「インハウスマーケター」 | 代理店での経験を活かし、事業会社のマーケティング戦略を内部から牽引します。 |
| プロダクトを導く「プロダクトマネージャー」 | 課題発見力を活かし、プロダクトの「何を作るか」を定義し、成功に導きます。 | |
| 経営課題を解決する「経営企画/コンサルタント」 | 戦略的思考力を活かし、マーケティング領域を超えたより広い経営課題の解決に取り組みます。 |
AIに仕事は奪われる?
「AIの台頭によって仕事がなくなるのでは?」という懸念を耳にすることもあります。しかし、アカウントプランナーの本質的な役割は、AIには代替できません。
AIが代替できるのは、データ集計やレポート作成といった「作業」の部分です。一方、以下のような業務は、人間にしかできません。
- クライアントとの信頼関係構築: 対話を通じて相手の感情や組織の構造を理解し、信頼関係を深める能力。
- 戦略的な意思決定: データからは読み取れない市場の空気やブランドのポリシーを汲み取り、最終的な戦略を判断する力。
- 創造的なアイデアの発想: ゼロから新しいコミュニケーションの切り口を生み出す、クリエイティブな思考。
AIは仕事を「奪う」のではなく、むしろアカウントプランナーを定型業務から解放し、より付加価値の高い戦略的な業務に集中させてくれる強力な「武器」となるでしょう。
6. 【完全ロードマップ】未経験から「なれる」に変わる、3つのステップ
ここまでの情報で「挑戦してみたい!」その気持ちを現実に変えるための、具体的なロードマップをご紹介します。
Step1:基礎知識を習得し、「やる気」を形にする
実務経験がない分、知識でその差を埋め、学習意欲をアピールすることが重要です。
- 書籍でのインプット: まずはマーケティングの入門書(例:『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』)や、論理的思考力を鍛える本(例:『イシューからはじめよ』)から始めましょう。
- 資格取得: Web広告の基本的な知識を証明できる「Google広告認定資格」や、データに基づいた思考力をアピールできる「ウェブ解析士」は、客観的な「やる気」の証明になります。
Step2:転職軸を定めて、「武器」を言語化する
知識のインプットと並行して、転職活動の「戦略」を立てましょう。「なぜアカウントプランナーになりたいのか」「なぜ他の職種・業界ではだめなのか」という転職軸を深掘りし、自分の「武器=経験」と結びつけて言語化します。これが、未経験からの転職活動で最も重要で、そして最も難しいプロセスです。
Step3:市場価値を伝えて、内定を勝ち取る
職務経歴書や面接では、実績や学んだスキルをただ羅列するのでは不十分です。「その経験から何を学び、その学びをどう活かして貴社に貢献できるか」という視点で、自信を持ってアピールしましょう。あなたの転職軸と、企業の目指す方向性が一致していることを示すことができれば、内定はぐっと近づきます。
【でも…】このロードマップ、一人で走りきれますか?
「自分の本当の強みって、どうやって見つければいいの?」
「未経験でも通用する職務経歴書の書き方が分からない…」
「面接で何を、どう伝えれば評価されるんだろう…」
未経験転職では、こうした壁にぶつかるのが当たり前です。
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